男性更年期障害
男性更年期障害は日本において、やっと認知されつつあるところです。
女性更年期障害の窓口は婦人科でありますが、男性の場合は内科、神経内科、心療内科、
精神科、整形外科などを受診し、泌尿器科医が主治医となることが多いでしょう。
女性の場合更年期障害の原因は明確で閉経により女性ホルモンの分泌が急激に低下するこ
とによってほてり、のぼせ、発汗など血管運動に関する症状が出てくるとされています。
しかし、男性の場合は閉経のようにはっきりした現象はありませんが、やはり徐々に男性
ホルモンの分泌が減っていくこともあり、中年期を迎えると様々な加齢症状が出てきます。
その他にも社会的環境の変化や心理的素因は男女共通して原因となり得ると考えられてい
ます。
<主症状>
・ 精神・心理症状
抑うつ、いらいら、神経過敏、不安、疲労倦怠感、生気消失
・ 身体症状
発汗、ほてり、睡眠障害、持続力低下、体力低下、筋肉痛、骨密度低下、
自律神経失調症、
・ 性機能関連症状
性欲低下、勃起力低下
<診察>
1) 問診 @精神・自律神経症状 A男性度チェック B泌尿器症状 などについて
2) 身体所見(主に前立腺の硬結や肥大の有無を直腸指針にてチェック)
3) 採血による男性ホルモン値、前立腺癌の可能性の検査
4) ED(勃起不全)の訴えがある方は陰茎周径計測バンドによる勃起能評価
などが行われます。
<治療>
@ 男性ホルモン補充療法(TRT:Testosterone replacement therapy)
精神・自律神経症状、心理症状があり、検査の結果、血中テストステロン値が低い場合に
は、男性ホルモン補充療法を行います。ただし、前立腺癌、重度の前立腺肥大症がある方
は、受けることができません。
現在、日本で使用可能な製剤は、注射薬と内服薬がありますが、内服薬は吸収が悪く、肝
機能障害を起こすこともあることから、主に注射薬が使われます。2~4週間に1回、筋肉
注射をするのが、一般的な治療です。
A 漢方
主に以下の様な漢方薬が処方されます。
(1)うつ状態・・・柴朴湯、抑肝散、加味帰脾湯、補中益気湯、茯苓飲合半夏厚朴湯
(2)循環器系障害(のぼせ・ほてり)・・・黄連解毒湯、桂枝茯苓丸、抑肝散加陳皮半夏、
八味地黄丸
(3)感覚器系障害(めまいなど)・・・苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、桂枝茯苓丸
(4)性機能障害(勃起不全)・・・柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸、補中益気湯、
B 抗うつ薬、抗不安薬
基本的にはスルピリド100~150mg(分2~分3)、SSRI(フルボキサミン)25~50mg眠前
などを処方されることが多い様です。不安の程度に応じて中程度の効力と持続のベンゾジ
アゼピン系抗不安薬を少量から開始します。それでも不安がのぞけない場合は、精神科、
心療内科等の専門家に相談するほうがよいでしょう。
C 勃起改善薬(バイアグラ®、レビトラ®)
男性更年期障害の患者さんの多くが勃起障害を合併しているようです。加齢のため勃起改
善剤を希望される方の治療は比較的簡単ですが、精神的な問題を抱えた患者さんが勃起不
全より、不眠、頭痛、脱力感などの治療を優先に考えることが多いようです。
男性更年期障害は主に40~50代で好発します。この年齢は「リストラ」「夫婦間の問題」
「親の介護」など、仕事やプライベートな事情でストレスが増す時期でもあります。
うつ病やストレスによる自殺が多いのもこの世代です。こういったストレスも男性更年期
障害の精神・心理症状の原因の1つと考えられています。また、加齢に伴う男性ホルモン
分泌低下の影響によって、性機能関連症状が出てくる時期でもあります。気になる症状が
ある場合、一度診察を受けることをおすすめします。
<参考>
綜合臨床,53(3)2004、
横山博美:男性更年期障害の診断と治療,PHYSICIANS’THERAPY MANUAL,7(2)JUN,2003
2004.6.14