●医業分業

医師は診断をした上で、治療に必要な薬の名前や服用量(使用量)、服用方法(使用方法)を記載した「処方箋」を発行します。患者さんは、その「処方箋」を保険薬局に持って行き、薬剤師は処方された薬以外にも、その内容に影響を及ぼす可能性がある状況がないかを患者さんにお聞きした上で、薬の量や飲み合わせ等を確認し、調剤をします。これを「医薬分業」といいます。

医師と薬剤師の2人の専門家が協力して二重に確認することにより、お薬を安全に使ってもらうための制度です。

現在、制度上「分業」と表記されていますが、「協業」と考えるのが本来の主旨です。それは医師と薬剤師がそれぞれの職能を活かして協力し、患者さんがより安心して、安全に薬物療法が受けられることを目的としたものだからです。

医師は処方箋を出し、薬のことを専門家である薬剤師に任せることで、より一層診療に専念することができます。その結果患者さんは、より充実した医療を受けられるようになります。また、医師が自由に薬を処方できるため、患者さんに処方し使うことのできる薬の幅が広がります。

それはできません。
それは「お薬だけをもらう」という行為は、今までと同じお薬を、同じ量で続けていいのかという判断を要する行為だからです。そのため、その時々の体の状態を診てもらった上で、処方せんを発行してもらう必要があるのです。
また、皆さまが持っているそれぞれの健康保険を使って調剤を受けるためには、保険診療がなされた上で、保険調剤をする必要があります。

ここで敢えて「くすりや」さんと表記しているのは、各施設において「ドラッグストア」や「調剤薬局」など異なった表記がなされており、それらにどういった違いがあるのか皆さまにとって判断しにくい状況にあるのではないかと思うからです。
「ドラッグストア」には、市販のお薬の販売以外に、調剤も出来る「薬局」と、調剤をすることはできない「店舗販売業者」とがあります。さらに、「薬局」には公的医療保険を取扱うことの出来る「保険薬局」があります。保険薬局では、多くの場合、「保険薬局」「保険調剤薬局」「処方箋受付」などの表示がされています。
このように、どこでも処方箋による調剤ができるわけではありません。「保険調剤」、「処方箋(処方せん)受付」などの表示がある薬局にご依頼下さい。そこには薬剤師がいて、調剤室があります。「保険薬局」であれば、健康保険を適用した処方箋による調剤ができます。

処方箋があれば、ご本人でなくてもかまいません。
例えば、患者さん本人は体調等の事情によりご自宅に居られ、ご家族の方などが代理で処方箋をお持ちになっても、調剤ができます。

薬を安全に使用していただくために必要なことをお聞きします。
例えば、以前に薬で副作用やアレルギーが起きたことはなかったか、他にどんな薬を服用しているかなど、心配がないことを確認して調剤します。なお、一度お聞きしたことは薬局で記録しておき、次回の調剤に役立てます。
かかりつけの薬局を決めておくと、患者さんの使用する薬(2ヶ所以上の医療機関からの薬や市販薬等)の重複や相互作用をチェックできるので、より一層安全な薬の使用が期待できます。

調剤した薬をお渡しする際、薬の名前、形や色、用法・用量、効能・効果、副作用のほか、食事、飲物を摂る上での注意、保管や服用上特に注意すべき事項などについて、文書を用いて説明することが薬剤師に義務付けられています。
この文書には患者さんがお薬を使う上で、大切な情報が書かれています。内容についての疑問があれば、すぐに薬局、薬剤師に確認しましょう。

薬剤師がご自宅に訪問して、薬の服用状況等を確認し、服薬の管理をする仕組みがあります。ただ単に薬を届けるだけではなく、患者さんやご家族の状況に応じた薬の飲み方や方法を一緒に考え、状態によっては主治医と相談し、飲み易い処方の工夫も検討します。
ご本人が外出できない状況であっても、直接必要なアドバイスを行ったり、薬に関するご相談に応じたりできます。
※医師からの指示に基づき、連携を図って実施します。

かかりつけの薬局に処方箋をファックスで送っておくと、調剤の準備に早く取りかかれるので、待ち時間を短くすることが出来ます。
ただしファックスをしたからといっても、調剤された薬を受け取るためには、「処方箋」の原本を4日以内(処方箋の有効期限)に薬局にお持ちいただく必要がありますので、お忘れなく薬局にお持ちください。

これは、薬局では患者さんの薬の使用歴(薬歴)を記録したり、丁寧な服薬指導を行ったり、飲み合わせの安全性を確認したりすることによるものです。
なお、医療機関と同じように、薬局(保険薬局)でも健康保険、その他各種公費等が適用になります。

●医業分業のメリット

1 医師が診療に専念し、薬剤師が調剤することにより、薬の使用がより安全になります。
2 処方箋により、患者さんの薬の処方内容が明らかになります。
3 かかりつけ薬局では患者さんの薬に関する記録を保管しています。
薬に対するアレルギー、副作用等を記録しておくことで、患者さんの服用する薬の安全性を高めることができます。
4 他の病院や診療所の処方と薬が重複していたり、危険な飲み合わせがある場合など処方内容に疑問がある場合、薬剤師が医師に問い合わせ、その結果、処方内容の変更や、処方中止等の処置がとられることもあります。
5 飲み忘れ・飲み間違いを防ぐため、1回に飲む薬を一包にまとめてもらったり、薬の名前や飲み方、効能・効果や副作用などの情報が記載された説明書をもとに詳しく説明を受けることができます。また、市販薬やサプリメントとの飲み合わせも確認いただけます。おくすり手帳に薬の情報などの記録をしてもらうことも可能です。

特に複数の医療機関や診療科を受診している患者さんは、是非1ヶ所「かかりつけ薬局」を決めて、処方箋による調剤を受けられることをお勧めします。